家族信託でかかる費用
家族信託とは、自分(委託者)の財産を家族や親族の他の誰か(受託者)に委託することをいいます。委託することで、受託者による財産管理で得た利益を得られるという仕組みになります。例えば、自分の子に土地を委託し、子がその土地を貸したり、マンションを建てて収入を得るといった具合です。本来、遺産は被相続人が死亡することにより相続されますが(民法882条)、家族信託は遺産相続の前に被相続人(委託者)の事業をスムーズに承継させることができ、委託者も便益(の一部)を受け取ることができるという点が特徴的な制度になります。
ここで現実問題として気になるのは家族信託の費用です。家族信託は、近年注目されるようになってきた制度ですが、実は誰でも手軽に利用することができるところに魅力があります。そのため、弁護士や司法書士といった法律のプロを介さずとも家族信託を利用することができるので、必要な費用はもっぱら書類の費用ということになります。原則必要になる費用は以下の2点です。
①登記を移転する費用
家や土地などの不動産を家族信託する場合、不動産の情報を登記に書き込むべきだとされています。信託財産として不動産を入れた場合には、登記上は登記簿(登記事項証明書)の甲区(所有者等の記載欄)に当該不動産の管理者(管理処分権限を持つ者)として、「受託者」の名前が記載されます。重要なのは、家族信託で登記をしたからと言って不動産の所有者が変わったということではないことです。つまり、不動産自身の所有者は変わらず委託者のままであり、この点贈与税が課せられないことになります。そして家族信託による登記でかかる費用は「登録免許税」のみでありこれは信託登記をする不動産の0.4%の代金になります。
②家族信託の契約内容を公正証書にする費用
信託法では3つの信託の方法を設けていますが、そのうちの1つに「公正証書による信託」があります(信託法3条3項)。公正証書とは、公証人により公に契約が認められたとみなされる証書になります。つまり、公正証書があることで信託契約の内容が信憑性を有するようになり相続トラブルをはじめとする無用なトラブルを避けることができます。
公正証書の作成にかかる費用は原則として契約の目的物の価格により決められます(公証人手数料令9条)。目的物が100万円以下の場合は5000円、そこから目的物の価格が上がるにつれ費用も上がっていき、目的物が3000万円〜5000万円の場合は4万3000円になります(詳しくは公証人手数料令9条別表を参照)。一般的な家族信託における不動産の価格の場合は公正証書作成にかかる5万円が上限だと思って良いでしょう。
以上の2点が家族信託にかかる費用になります。専門家に依頼しなければ大体の場合15万円程度で抑えられると考えられます。ただ、家族信託の手続きに時間がない、あるいは自信がない場合は専門家に依頼することをお勧めします。この場合は50万円以上はかかることになります。ですが家族信託のメリットを考えるとスムーズな後継者の委譲に資するので有効であると思われます。
司法書士栗原事務所は川崎市・町田市・稲城市・世田谷区を中心に家族信託に関するご相談を受け付けております。まずはお気軽にお問い合わせください。