家族信託で起こりやすいトラブル
■家族信託とは
家族信託とは、比較的新しく設けられた制度で、未だ広く認知されていません。しかし、新たな財産管理の方法として注目されています。そこで、家族信託について詳しく解説し、実際に家族信託を利用する際に注意すべき点について、事例を交えながら確認していきます。
●家族信託の基礎知識
家族信託を理解するうえで、まずは「信託」という仕組みの理解が必須です。信託においては、委託者・受託者・受益者という3者が登場します。委託者は、財産を預ける人を意味します。受託者は、財産を預かる人を意味します。受益者は、財産から利益を得る人のことを意味します。
これを家族信託に置き換えて考えると、委託者が有する財産の管理を、家族のうちの誰かを受託者として任せることで、委託者本人や他の家族が受益者として利益を得る、という仕組みであることが分かります。つまり、委託者である本人と、受託者である家族との間の契約関係によって成り立っているのです。
●家族信託の特徴
家族信託では、将来的な財産管理の委託と、遺産の承継を視野に入れて行われます。そのため、遺言や後見制度と比較することで、家族信託の特徴を知ることができます。
遺言とは、将来、本人が死亡して相続が発生した時のために、遺言書を作成しておく制度です。遺言者は、生前のうちに意思表示をしておき、死後にその意思表示が効力を生じます。
また、後見制度とは、本人(被後見人)が判断能力のあるうちに、後見人を決めて財産管理を任せる等の意思表示をしておく制度です。被後見人の判断能力が失われたときに、その意思表示の効力が発生します。
家族信託の場合には、本人が生きているうちから、家族に対して財産管理等を任せることができます。そして、本人の判断能力があるうちから、財産管理が始まります。そのため、遺言や後見制度に比べて、早い段階から、本人の意思を反映させることができるといえます。遺言や後見制度の場合、本人が生きている間、あるいは、判断能力を有している間には、財産管理は行われないため、その様子を本人が見届けることはできません。しかし、家族信託であれば、信頼のおける家族に財産管理等を委託し、実際に家族による財産の管理等が行われる様子を、本人が見届けることができます。これは、委託者本人にとって、大きなメリットといえるでしょう。また、これは家族にとってもメリットとなります。なぜなら、早い段階から財産管理を行うことができるため、突然、本人に万が一のことがあったとしても、その後スムーズに財産管理を続けることができるからです。
●家族信託でよくあるトラブル事例
家族信託を行うにあたっては、メリットもある反面、デメリットも存在します。そして、家族信託を利用することで発生するトラブルもあります。ここでは、いくつかのトラブル事例と、その対策について紹介します。
①受託者以外の相続人が不満を抱えてしまうケース
家族信託においては、財産管理について受託者が大きな権限を持ちます。そのため、受託者以外の家族や他の相続人が、受託者に対して不公平感を抱いてしまうことがしばしばあります。
そのため、信託契約を結ぶ話し合いの際には、委託者と受託者だけでなく、他の家族も交えて話し合いを行い、情報をしっかりと共有するようにしましょう。そうしないと、不公平感から、後に相続が発生した際、トラブルに発展する可能性があります。
②信託契約の有効性を巡って、トラブルが発生するケース
信託者と受託者が信託契約を結ぶと、その内容を契約書にまとめることになりますが、その内容を後から覆されたり、解釈による食い違いが起きたり、といったトラブルが起きることがあります。そのため、契約書には曖昧な表現の記載を避け、解釈の余地を残さないようにしましょう。そして、作成した信託契約書は、公証役場で公正証書化しましょう。
③信託の内容が、相続人の遺留分を侵害しているケース
一部の相続人には、最低限相続できる一定割合としての「遺留分」があります。この遺留分を侵害するような信託は、無効となり得ます。信託内容を決定する段階で、遺留分侵害のおそれがないか、確認しておきましょう。
■家族信託に関するご相談は当事務所まで
司法書士栗原事務所では、家族信託に関するご相談を幅広く承っております。司法書士は、普段から家族信託に関する手続きを多く取り扱っております。家族信託を検討されている方は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください。